2つの専用スプレーとは、「セフティガード」と「ジェットエタノール」という専用スプレーです。それぞれのスプレーが異なる役割を持ち、エアコンクリーニングの安全性を高めるための重要なツールとなっています。

　エアコンクリーニング時に特に注意が必要なのが、モーターやコネクターといった電気部品です。これらの部品は構造上、完全な防水対策が施されているわけではなく、わずかな水分でも故障の原因となることがあります。

　そこで活躍するのが「セフティガード」です。このスプレーは、電気部品の表面に薄い油膜（5ミクロンから10ミクロン程度）を形成し、水や洗剤の侵入を防ぐ役割を果たします。

　この油膜は、単に水を弾くだけではありません。絶縁効果を高め、万が一水分が浸入してしまった場合でも、漏電のリスクを大幅に低減する効果が期待できます。

　セフティガードの特筆すべき点は、その安全性です。あらゆる樹脂やゴムを侵さない特殊な合成油を使用しているため、エアコンの様々な部品に安心して使用することができます。

　セフティガードは、洗浄前の準備段階で使用されます。モーター、コネクターといった水濡れが心配な電気部品に対し、軽く吹き付けることで薄い保護膜を形成します。スプレーの目安としては、部品の大きさに合わせて、1秒から2秒程度。表面に油膜が形成されたと感じる程度です。

●エアコンの基板
●エアコン内部のモーター
●各種コネクター
●電磁弁コイル（注意点あり）
●VVFケーブルの差し込み口
●ドレンポンプのコネクター部分
●換気扇のスイッチ関係、コネクター
●厨房機器のコンセントなど、水がかかる可能性のある電気接続部

●温度センサーは、構造上油膜が付着すると**正確な温度検知を妨げる可能性があるため、基本的に養生は避けるか、慎重に行う必要があります。ただし、万が一かかってしまった場合は、後述のジェットアルコールで洗い流すことが推奨されています。
●スプレーする際は、下にタオルなどを敷き、液だれによる床の汚れを防ぐように注意が必要です。
●セフティガードは可燃性のガスを使用しているため、火気の近くでの使用は厳禁です。また、40℃以上の高温になる場所（夏季の車内など）での保管は避ける必要があります。

　海沿いの工場に設置された大型な重電設備のブレーカー部分では、塩害による腐食が深刻な問題でしたが、セフティガードを使用することで、約1年間の防錆効果が確認されたという事例もあります。また、輸出用のパワーショベルの油圧系統のコネクター部分にセフティガードを塗布することで、水による腐食を防ぐ対策が施されている事例も紹介されています。

　エアコン内部には、精密な電子回路が組み込まれた基板が存在します。これらの基板に汚れが付着すると、動作不良の原因となることがあります。また、クリーニング後に水分が残ってしまうと、サビや腐食に繋がる可能性も否定できません。

　そこで使用されるのが「ジェットエタノール」です。このスプレーは、基板に付着した油汚れやホコリを洗い流すとともに、残留した水分を素早く揮発させる効果があります。また、除菌効果も期待できるため、衛生的なクリーニングにも貢献します。

「ジェットエタノールは、純度の高いアルコールを使用しているため、樹脂やゴムを傷める心配がほとんどありません。基板の細かな部分の洗浄にも安心して使用できます。

　ジェットエタノールは、電気部品の洗浄と洗浄後の仕上げで使用されます。電気部品の洗浄では、ジェットエタノールを吹き付けて汚れを洗い流します。その後、ブロアーなどを使用して完全に乾燥させるのがポイントです。完全乾燥させたらセフティガードで養生をします。

　万が一、電気部品に洗剤や水が付着したら、ジェットエタノールを吹き付けて水分を吹き飛ばし、ブロアーで完全乾燥させます。これで、漏電リスクは限りなくゼロになります。

「ジェットエタノールは揮発性が高いのですが、冬場など気温が低い場合は乾燥に時間がかかることがあります。ブロアーで風を当てることで、より迅速かつ確実に乾燥させることができます。

●エアコン内部の基板
●モーター類・コネクターの洗浄
●電子レンジ内部の油汚れ除去後の除菌
●浴室の天井などに発生したカビの殺菌
●マートフォンなどの充電コネクターの清掃
●熱交換器の除菌・消臭

●ジェットエタノールは引火性が非常に高いため、使用中は火気を厳禁とし、換気の良い場所で使用する必要があります。また、通電中の電気機器への使用は絶対に避けてください。
●セフティガードと同様に、スプレーする際は、下にタオルなどを敷き、液だれによる床の汚れを防ぐように注意が必要です。
●アルコール臭が気になる場合は、使用後にしっかりと換気を行う必要があります。

　静岡県にある重電設備では、以前はホームセンターで購入したアルコールを綿棒に染み込ませて清掃を行っていましたが、ジェットアルコールの導入により、効率的かつ安全に電気部品の清掃が行えるようになったといいます。
　また、介護施設では、手の届かない浴室の天井に発生したカビの除菌にジェットエタノールが活用されている事例もあります。

　基本的な流れとしては、まずジェットアルコールで基板などの汚れを洗い流し、ブロアーで完全に乾燥させた後、セフティガードで電気部品を保護するという手順を踏みます。

「洗浄によって表面のゴミや汚れを落とし、その後に絶縁効果のあるセフティガードで保護することで、より確実な養生が可能になります。これにより、エアコンクリーニングにおける電気系統のトラブルリスクを最小限に抑え、顧客に安心感と信頼感を提供することができます。

　
　これからのエアコンクリーニング業者選びにおいては、単に料金の安さだけでなく、「どのような養生を行ってくれるのか」「安全対策は万全か」といった視点も重要な判断基準となるでしょう。

　もしあなたが、自社のエアコンクリーニングの安全性に不安を感じているのであれば、「専門知識と確かな養生技術」をマスターすることをおすすめします。二つの専用スプレーを用いた「丁寧な養生技術」は、あなたのエアコンクリーニング技術をワンランクアップしてくれるはずです。